こんにちは、今回は【地域の小学校の支援学級の現状】人材不足が深刻でも改善されない理由というテーマで書いていきたいと思います。
こんな方におすすめ
- これから教員をやっていこうと思っている方
- 教員の経験が浅い若手の先生方
- お子様の支援学級の入級を考えている保護者の方々
支援学級についての記事はこちらにもございます。
良ければこちらもご覧ください。
もくじ
支援学級を選択する子どもが増えてきた背景
近年、発達障害について耳にする機会が増えてきていて、世の中に少しずつ浸透し、発達障害を理解をしていこうという流れが生まれつつあります。
また、そんな発達障害を持つ子どもの保護者が、地域の小学校の支援学級を選ぶというケースが増えていています。
入学後、1年間は通常の学級で過ごしていた子どもが、2年目からは支援学級を希望して入級するというケースも増えています。
一昔前は、小学校の支援学級には子どもが数名しかいなかったですが、今は数十人もいる小学校があるくらい人数が激増しています。
そんな風に支援学級の子どもの数が増加した背景には、医療やテクノロジーが発達し、発達障害の理解が深まったことで
「あれ、この子も発達障害ではないか?」
と、大人たちの気づきの感度が上がったことが考えられます。
また、国の方針が変わり、今まで通常の学級の中で見過ごされてきた軽度の発達障害の子どもにまで支援の手が行き届くようになったことも挙げられます。
発達障害のはっきりした原因はわからないとはいえ、昔より発達障害を持つ子どもの数自体、増えているということもあります。
このように、支援学級を選択する家庭が増えているということは、それだけ子どものことを正しく理解し、それに合った教育を求めている証拠でもあります。
これまで、支援学級に入ることを頑なに拒む家庭も多かったですが、今はずいぶん減ってきた印象です。
もちろん、保護者にとって、支援学級を選択することは大きな決断であり、子どもの入級を決めても心配は尽きないものです。
「支援学級に入級させると、通常のクラスで、のけ者にされないだろうか」
「友だち関係は作れるだろうか」
そんな思いの中、子どもを入級させているのです。
重要なことは子どもたちが
「私は通常の学級で学ぶ」
「僕は支援学級で学びたい」
などと、自分に合った学びを選択できることです。その子の学習をする機会を保証してあげるためにも、
「支援学級が学びの場としての選択肢になる」
という今のような流れが加速していけばいいなと思います。
小学校の先生方も、支援の必要な子どもが支援学級に入級してくれると、
「やっと適切な支援ができるようになった」
と感じて安心しています。
地域の小学校の支援学級の現状
子どもが増えすぎて支援ができない
しかし、支援学級に在籍する子どもが増えたことで大きな問題も出てきています。
それは、支援級に入級する子どもが増えすぎて、支援の手が足りなくなっていることです。
なぜ、支援の人手が足りなくなるのでしょうか。この辺りをもう少し詳しくお話しましょう。
まず、支援学級に在籍した子どもは支援学級担任が担当することになります。
(もちろん、通常の学級の担任の先生もいます)
支援学級担任が担当する子どもの数は、子どもの障害種別によって変わってきます。
例えば、ある小学校に自閉症の子どもが1人、肢体不自由な子どもが1人いたとします。
この場合は、支援担任は、自閉症・情緒障害学級(事情)担任に1名、肢体不自由(肢体)学級担任に1名の
計2名配置されます。
このようなケースなら、かなり手厚く子どもを見てあげられますが、ほとんどの小学校では、
自閉症・情緒障害学級に在籍する子どもがかなりの割合を占めています。
つまり、発達障害に該当する子どもが多いということです。
極端な話ですが、事情学級の子どもが8人在籍していた場合でも、事情の支援担任は1名しか配置してもらえないのです。
これは制度上、支援学級の1クラスに8人まで入れることができるため、
「今年の自閉症・情緒障害学級は1クラスで8人担当してください」
と決められたら、担当せざるを得なくなります。
もちろん、子どもの実態も考慮して、上限の8人まで1クラスに押し込むことは少なくですし、
パート勤務の特別支援学級支援員を配置してくれることもあります。
それでも、6人、7人を担当することは普通によくあります。
保護者の不平不満が溜まる
支援学級の子どもを支援できないような場面が増えると、どんなことが起こるのでしょうか。
保護者は
「個にあった支援がしてもらえる!」
と期待して子どもを入級をさせているにも関わらず、学校側は大した支援をしてくれていないと不満を抱き始めるのです。
事情の支援担任としては、8人の子どもの支援をする際、優先順位を決めて支援をすることにします。
その基準は、主に子どもの障害の軽重によって決めていきます。
仮に担当している8人の子どもの中に、目を離すことができない重度な自閉症の子どもがいたとします。
安全面の観点から、その子を放っておいて他の子のところに支援に行くことなどできないでしょう。
このように、より支援が必要な子どもには支援学級での授業や通常の学級での入り込み支援の時間を増やしますが、
支援が必要とはいえ、どうにか一人で過ごすことができる子どもは、可哀想ですがほったらかしになってしまう時間が増えます。
このように、支援をする子どもが偏ってしまうのです。
すると、保護者は支援担任にこんな不満をぶつけます。
「なぜ、私の子どもへの支援がこんなに少ないのでしょうか。」
「◯◯さんの支援はとても多いのに、あまりにも不公平ではないですか。」
「支援をしてもらえると聞いたので、支援学級に入級したのに、話が違うではないですか。」
これを言われると、支援担任も辛いところ。
支援をしたくても手が足りず、自分たちではどうしようもないからです。
そもそも8人の子どもを担任1人で見るのが無理な話であり、
すべての子どもを平等に支援することなどできるわけがないのです。
どうしても優先順位はついてしまうのです。
しかし、そんな事情は保護者にとっては知ったことではないのです。
というか、自分の子どもの事しか見えていない保護者も少なからずいたりもします。
支援担任は学校側の人員不足の事情を話しつつ、理解してもらうよう努めますが、それでも納得しない保護者がいることも事実です。
そんな出来事が積み重なって、保護者は学校、そして担任不信に陥ります。
そして、お互いにギクシャクした関係になってしまい、保護者・支援担任がしんどいを思いを抱えたまま1年を過ごすことになります。
おそらく、このような事例は全国でも枚挙にいとまがないほどあります。
「もう子どもを支援学級には行かせません」
と怒って支援級をやめさせてしまう保護者もいるくらいです。
振り回される支援担任
保護者にそっぽ向かれては子どもに適切な支援などできません。
どうにか、保護者に納得してもらうために、子どもの支援の在り方を見直すための支援会議が開かれます。
そこでは、様々な意見が出てくるものです。
A先生
「やはり、保護者に納得してもらうことも必要なので、他の子どもの支援を減らして、その子どもの支援をする時間を増やしてあげられないものか。」
B先生
「それはおかしい。支援してもらっていない子は、その子だけじゃない。私たちは必要な子どもを優先して支援をしているので、それはしかたがないこと。」
C先生
「意見を言ったもの勝ちになるのはおかしい。保護者には納得してもらうまで、何度も説明を続けていきましょう。」
こんな意見でなかなかまとまらないものです。
結局、どっちつかずで、その場しのぎの支援になってしまうことも少なくないのです。
意見を言ってきている保護者の担当をしている支援担任は、会議で先生方から言いたい放題の意見を言われ、
「結局、その意見を保護者に言うのは私なのよね・・・」
という複雑な心境になってしまうもの。
担任として、保護者には言うべきことを言わないといけないが、
保護者との信頼関係は崩してはいけないという難しいかじ取りをしなければならなくなります。
人手不足の解決策を考えてみる
では、このような支援学級の人手不足の問題をどうやって解決したらいいか考えてみます。
考えうるアイデアは3つあります。
子どもの数を均等分けして分担する
先ほどまでの説明の通りだと、事情学級の子ども8人を事情学級の1人の担任が担当し、
肢体学級の子ども1人を肢体学級の1人の担任が担当することになりますね。
でも、これって不公平だと思いませんか。
子ども8人の先生の負担が大きすぎますよね。
確かに、肢体学級の子どもは歩行の補助などたくさんの支援が必要ではありますが、
全ての時間を肢体学級の担任と1対1で授業をするわけではないでしょう。
だとすると、事情学級の8人の子どもの内、3人でも肢体学級の担任が受け持てば、ずいぶん均等になるのではないでしょうか。
これで、事情学級の担任も以前よりは、動きやすくなり、他の子どもの支援にいくことができるはずです。
実は、制度の中に弾力的な運用という項目があり、
「自分の担当している子ども以外の子どもも担当してもよい」ことが明文化されています。
あくまでも、受け持っている子どもを優先した上での話ですが。
「じゃあ、これで人手不足がいくらか解消されるのでは?」
と思うかもですが、そんな甘い話ではないんです。
この障害種別をごちゃまぜにして、子どもを均等分けして担当する方法は、
実は、この学校でもすでに実施しています。
あまりオープンにはしていないと思いますが、支援級の子どもが多い学校なんかは、これをしないと現場が回らないというのがあります。
ということで、この方法を実施していても、なお人手不足が解消されないわけです。
次の手を考えてみましょう。
学校全体で支援する体制を作る
支援学級担任が支援級の子どもを1人で見れないとなると、次は誰が見るのかと言う話になります。
特別支援学級支援員がサポートに入ってくれていても人手が足りないという想定です。
当然、学校全体で支援の子どもたちを支えていこうということになりますよね。
学校全体というのは通常の学級の先生たちです。
その先生たちの空き時間を使って、支援級の子どものサポートに行ってもらおうという案です。
でも、これは非常に酷な話です。
通常の学級担任は、クラスに30人以上の子どもを一人で見ているわけです。
授業準備に加え、学年行事の準備もしていかなければならず、仕事量は学校で一番多いポジションです。
そんな中、貴重な空き時間を使って、支援級の子どものサポートをすることになったら、通常の学級の先生たちはどう思うでしょうか。
「支援学級が大変ならしかたがないな。力を貸そう。」
と思ってくれる先生がいる一方で、
「納得できない!」
といって、突っぱねる先生も一定数おられるものです。
「支援学級の子どもなのだから、支援級の担任同士でやりくりして見るべきではないか。」
「私のクラスでは、支援在籍の子どもは、ほとんどみてもらえていない。」
「それなのに、こっちがさらに支援の子をサポートするのはおかしいのではないですか。」
こんな意見が飛び出すこともあります。
こうなると、学年の先生方には頼むのが難しくなりますよね。
このような意見が出るということは、これまで、通常の学級担任と支援級の担任がうまくコミュニケーションをとれてこなかったという経緯があるでしょう。
そもそもの支援に対する考え方も先生によって違うわけですから、どちらが正しいとも言えません。
実際に。困っていたら学校全体でサポートすることが当たり前になっている学校もあれば、
支援は支援、通常の学級は通常の学級で、という学校もあります。それぞれ学校の事情もあります。
それでも、困っている子どもがいて、その子どもに支援の手が届いていないとしたら、やはり、そこは放ってはおけません。
かなり難しいかじ取りにはなりますが、お互いに妥協できるところを探し、話し合っていくしかなさそうです。
そもそも学校側で対応するべきことなのか
ここまで読んでいただいて、
たくさんの子どもを支援学級に受け入れるのなら、しっかりした支援体制を作っておかないといけないというのがよくわかったのではないでしょうか。
人手が足りなくなりそうなら、もっと早くどうやって解決しておくか考えておくということ。
でも、そもそも、どこがそれを構築するべきなのでしょうか。
それは学校側が作るべきなのでしょうか?
今、支援学級の子どもの数はもとより、その障害の特性も多様化しています。
ということは、それだけ一人ひとりに合った支援も必要になるわけです。つまり、それはそれだけ人員も必要となることですよね。
そんな状態で、学校側の先生だけで支援体制を作ってどうにかせよというのは、???ではないでしょうか。
学校現場はもはや限界です。
これ以上は今の人数だけでは対応できないのです。
つまり、この問題は学校側の支援体制の問題ではなく、行政、教育委員会が適切な数の人員を配置していないということが問題なのではないでしょうか。
全ての問題が、人手が足りないことから起こってきていることなので、学校側の現状を教育委員会はもっと正確に把握し、適切な数の人員を配置するべきなんです。
それができていないから、学校側が機能しなくなっているんです。
ただ、これも一筋縄にはいきません。
学校側の事情と教育委員会側の事情は異なるからです。
これは市区町村の教育予算に関わる問題で、人員を増やすにもお金が必要なのです。
ご存じの通り、どこの市区町村も厳しい財政状況です。
それを物語っているかのように、支援学級のサポートとして期待される特別支援学級支援員のお給料はかなり低水準になっています。
ハードな仕事内容であるのに給料だけ安いのですから、当然、応募をかけても人が集まってきません。
(これが人手不足になっている原因の一つでもある)
そんな状況でも、給料面、待遇面を一向に改善できない厳しい事情があるわけなのです。トホホ・・・
今からでもできることを考えてみよう
まぁこんな感じで解決の糸口が見当たらないわけですが、少なくとも保護者からの不平不満が出にくいように予防策を講じておくことは可能です。
それは、教育委員会側が事前に保護者に小学校の支援学級の人手不足の現状を伝えておくことです。
「この小学校の支援学級の現状から、ここまでの支援は可能ですが、希望されているような支援までは難しいです。」
などとはっきり線引きをしておいてもらう。
小学校の現場の内情を詳しく知っているのは学校側ですが、あえて教育委員会側にこの役目を担ってもらう理由は、
支援学級の担任数を決めているのが教育委員会である以上、その説明責任も教育委員会にあるべきだからです。
もちろん、学校側もその説明に立ち会うというのがベストでしょう。
この過程がないと、保護者は子どもが支援級に入級したら、しっかり支援をしてくれると期待します。
なので、保護者の希望を聞きつつ、学校側でできる支援を伝えていき、
できること、できないことを入級前にていねいに伝えておく必要があるのではないでしょうか。
すると、説明を聞いた保護者の中で
「あまり希望通りの支援ができないみたいだから、別の選択肢を考えてみよう」
と新しい進路の選択肢も生まれるかもしれませんし、
「支援学級に入級しても、何から何までしてもらえるわけではないのね。」
「それなら、しっかり自立できるよう家でも見ていかなくちゃ。」
そんな風に思う方もいるかもしれません。
少なくとも、
「聞いていた話と違うではないか!」
と怒って学校不信になる保護者は少なくなるでしょう。
本当にこういう丁寧な説明が抜けていることがけっこう多いですので、きっちりやってもらいたいところ。
支援学級の人員の問題も、いろんな事情があるわけですので、あんまり支援担任に無茶は言うのは勘弁してあげてください。
もちろん、黙ってみているだけでは改善はしていきません。
少しでも現場の先生方が声を上げていくことはもちろん、保護者の方々にも行政への働きかけをしてほしいところです。
そうやって少しずつ
教師が働きやすい学校
子どもが過ごしやすい学校
保護者が安心して任せられる学校
にみんなでしていきましょう。
今回は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
よければこちらの記事もご覧ください。