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【発達障害ASD】ものへのこだわりが強い子どもの対応について

2019年8月25日

 

こんにちは、今回は、【発達障害ASD】ものへのこだわりが強い子どもの対応についてというテーマで記事を書いていきます。

 

 

こんな方におすすめ

  • これから教員をしようと考えている方
  • 子育てをしているお父さん・お母さん
  • 発達障害について興味がある先生方

 

 

発達障害とは?

 

発達障害について簡単にご説明していきます。

発達障害とは、生まれつき脳の発達のしかたが違う脳の機能障害です。その発達の違いによって、日常の生活を送るうえで、周りの人とうまく関わることができなかったり、しんどさや不安を抱えていたり、さまざまな困難を伴うことがあります。発達障害という言葉は、世の中に認知されてきてはいるものの、まだまだ適切な理解、支援がされているとは言えないのが実情です。まずは、発達障害について正しく知ってもらうことで、少しでもみなさんの理解を深められたらと思います。

 

発達障害とは言っても、さまざまなタイプがあります。主なものが、次の3つです。

1つ目が、自閉スペクトラム症(以後、ASD)と呼ばれるタイプです。

2つ目が、限局性学習症(以後、LD)と呼ばれるタイプです。

3つ目が、注意欠陥多動症(以後、ADHD)と呼ばれるタイプです。

 

今回は、1つ目のASDについて詳しく書いていきます。

 

 

広汎性発達障がいからASDへ

 

少し前までは、広汎性発達障害、アスペルガー症候群(以後、アスペルガー)、高機能自閉症(以後、高機能)などと呼ばれていましたが、これらの特性の明確な線引きが非常に難しく、

「それならいっそのこと線引きをして考えるのをやめて、全てを連続的にとらえよう」

という考えに変わってきました。そして、呼び名もASDという名に統一されるようになりました。まだまだ社会全体の中では一般的に広まってきていないですが、教育の現場ではASDで統一されて使われるようになってきています。(私も初めは、ややこしくて、広汎性発達障害とアスペルガー、高機能自閉症の違いは何?などと頭が混乱していましたが、1つに統一されて、すっきりしました。)

 

ただ、ASDで全て言い表されてしますと、少々困ることもあります。それは、ASDの中でも、どのような特性が強い子なのか、どこが苦手なのかなどがASD表記だけでは、わからなくなってしまうということです。アスペルガーと診断されているなら、「言葉の発達・知的な発達の遅れはないな」などと分かりますが、ASDだけならなんの判断もできません。

 

医療の現場でまだ、アスペルガーや高機能が使われているのはそういった理由からなのかなとも思います。

 

 

ASDの子どもの特性とその支援方法

 

こだわりがある

 

前置きが長くなりましたが、ASDの子どもは、どのような特性を持っているのでしょうか。また、どのように支援してあげればよいのでしょうか。ASDの子どもの特性として、まず挙げられるのが、ものごとに対して特有のこだわりを持っていることです。こだわりもいろんなこだわりがあり、私たちがこだわるという意味とは少し次元が違います。

 

例えば、毎日同じようなルーティンを好んだりする子がいます。決まった手順で作業をする、決まった道順を通って移動する、この時間には必ずこれをする、などと自分で決めて、それに従って行動をするのです。そのルーティンが崩れるとパニックと言われる症状になったり、泣いたり暴れてしまったりしてしまうこともあります。こだわるが強すぎると、ものごとの融通が利きにくいので、周りの理解が必要となります。

 

自分のこだわり通りに進めないと、強い違和感を感じたり、不安になったりすることもあるので、ある程度許容できるところはしてあげる必要があります。ただ、そういったこだわりは、見方を変えて考えると、ある一定の生活パターンをやり通すことができる意思の強さとも言えますし、好きなものに対しては、とことんめり込める才能とも言えます。

 

その特性によって、ある一定の分野について飛びぬけた知識を持っていることがあります。あまりみんなが興味を持たないようなものに興味を持ったりすることもよくあり、その才能を将来にうまく生かしてあげられるよう支援していくことができたらいいなと思います。

 

 

また、特有の匂い(臭覚)、音(聴覚)、味(味覚)、服(肌に触れる)を嫌ったりする感覚過敏があることも多いです。一般的にみんなが苦手とするようなものも含めてですが、より多くの過敏性を持っています。これらのことも配慮していってあげるとよいでしょう。

 

 

コミュニケーションが苦手

 

ASD特性の子の最大の特徴と言えるのが、人とのコミュニケーションが苦手なところです。

ASDは、社会的コミュニケーション障害と言われています。ASD特性の子どもは、人と関わったり、話したりするのが苦手です。一方的に自分の話ばかりしてしまう、自分中心の考え方をしてしまう、カッとなって怒りっぽい、相手が嫌な気持ちになることを平気で言ってしまう、またそれを聞いている相手の気持ちにまで思いが至らないなどの傾向があります。

 

友達から「あいつは変なやつだ「なんてわがままなやつだ」「あいつはいつも自分勝だ」などと思われてしまうことも多々あります。相手の気持ちを想像することや、相手の表情を読むのも苦手で、たとえ話、皮肉、フィクションなどを理解するのが難しく、それらを嫌ったりする傾向もあります。

まず、大人が子どもにしてあげる支援としては、話が一方的であっても、しっかりと最後まで聞いてあげることです。

「自分の話ばかりじゃないか」「いやいや、自分中心であなたが悪いのではないの?」

と感じるところもあるでしょうが、それをぐっと我慢して関わってあげることが私たち大人の役割でもあるでしょう。子ども同士ならすぐにトラブルになってしまいます。しっかり子どもの話を聞いてあげて、信頼してもらえるような関係を作ります。

 

 

ASD特性の子に多いのは、人を好きか、嫌いかのどちらかで判断してしまうところです。0か100かの世界です。その線引きが非常に真っすぐで、正直すぎるので、時には残酷でもあります。「この人、嫌い」と思えば、本能の赴くまま、とことんその人を攻撃してしまいますし、好きならとことん一緒にいたいと思って素直になってくれます。そのよりよい関係ができたら、こちら側の話を聞き入れてくれる基盤ができたと言えます。そこから、少しずつソーシャルスキルを教えていってあげましょう。ソーシャルスキルとは、社会の中で、人と関わる上で必要となる力のことで、この力を伸ばしてあげることで、うまく社会に順応していくことができます。

 

社会の中には、暗黙のルールがあること、本音と建前という世界があるということ、思ったことは何でも言ってはいけないこと、相手に合わせることは大切であるということなどを順に教えていきます。

 

 

また、感情についても教えていきます。感情というものを理解し、自分で感情をコントロールできるようになることも身に付けていかなければなりません。(非常に苦手な子が多いです)一般の子どもたちなら、家や学校で自然と身についていくスキルですが、ASD特性の子どもは社会的コミュニケーションが特に苦手なので、しっかり教えていってあげなければなりません。

「こんな時は、こうするよ。」ということを順に、ていねいすぎるくらいわかりやすく教えていってあげましょう。

 

 

学校・社会のルール(人に迷惑をかけないこと、時間を守ることなど)があっても、自分の中で納得できないものは守ることが難しかったりします。自分の中の特有の理屈を持っていて、自分なりに納得できない限り、ルール、約束事を守る気持ちになりません。叱ったり、怒ったりして守らせようとしても、その場しのぎで、本当の意味で、納得して守っているということにならず、長続きしません。

 

 

子どもの対応のしかたクイズ

 

子どもの対応のしかたで、例文を1つ用意しましたので、一緒に考えてみましょう。

 

学校内で起こりがちなケース

靴箱からASD特性のAさんの上靴が落ちていました。それを偶然見つけたBさんが親切で拾ってあげて、靴箱に戻してあげようとした瞬間、「勝手に靴を取るな、どろぼう!」とAさんが突然怒り出し、Bさんにつかみかかろうとしました。

 

こんな場面に出くわすと困りますよね。さて、あなたならどう対応しますか。

 

 

では、正しい対応の方法を書いていきます。こんな場合は、何より私たちが落ち着いて対応することが大事です。

間違っても子どもと同じトーンで「靴を拾っただけなのに、何を怒っているんだ!」

「そんなことで怒るのはおかしい!謝りなさい!」と怒鳴って指導してしまうことがないように。こういう対応はNGです。あまり効果は見込めません。

 

 

そんな時は、まずその場から離れさせ、Bさんとも離します。

「腹が立つことがあったんだね

「ゆっくり話を聞かせてもらうので、落ち着いて話ができる場所に行きましょう

などと言って、静かな別室等にAさんだけを連れていき、話を聞いてあげます。一応作り話ですが、ASD特性の子どもの場合、次の①、②の理由でAさんが怒っているのではないかと予想しておくことが重要です。

 

①Aさんは靴を取られたと思い込んでいること

②自分の靴を勝手に触られたことが嫌だったこと

(ものへのこだわり、自分でしたい気持ちが強い)

 

①自分のものを触られるだけで取られると思い込んでしまったり、②自分のものを触られるのを嫌う子どもはけっこういます。①だけの理由でAさんが怒っているのなら、教師が間に入ってきっちり説明をしてあげます。Bさんが親切で拾ったくれたこと、決して取ろうとしたのではないということを伝え、これで、Aさんが納得できたら、Bさんに謝りに行きます。これで、ひとまず解決となります。

 

しかし、Aさんが②の触られるのが嫌だったという理由で納得していない場合はちょっとややこしいです。Aさんのものを誰も一切触らずに学校生活を送ることなどできないからです。我々教師の感覚で話をすると、強引にAさんの方が悪いと押し切ってしまいそうな状況ですが、それではAさんの中に納得感は生まれません。

 

ASD特性の子どもは、私たちからしたら大したことがないことでも、大問題であるということがあります。その問題解決の際も特有のこだわりや理屈があり、それをなかなか崩せません。ルールを教えていく中で、子どもがどうしても納得しないような場合は、まず子ども側の理屈をよく聞き、その上で大人側の理屈を伝えましょう。

 

今回のケースだと、

Aさん

親切でしてくれたのはわかったが、触られるのは絶対に嫌だ。自分のものだから自分でしたいんだ。

教師側

親切でしてくれる人もいるので、友だちのものを触られることは学校では必ず起こり得る。それを絶対に防ぐことはできない。これを許したら、他の子がAさんのものを少しでも触ったら、Aさんは怒り出し、それを許してしまうことになる。

 

このようにお互いに譲れないようなことがあると、話は平行線をたどり、なかなか前に進みません

こういった場合は、一方的に話を進めるようなことはせず、お互いに折り合いをつけられるところを探ります。

 

「こんな問題、折り合いも何もAさんに我慢を教えるべきことではないのか

と思われるでしょう。もちろん、そういう部分もありますが、Aさんの特性もしっかり理解した対応も大事になります。今回のケースで、折り合いをつけるポイントとしては、まず、教師はものを触られずに学校生活は送れないことを毅然と伝えること、その上で、友達などに自分のものを触られた時の対処法をAさんと一緒に考えるのがよいと思われます。以下の対処法で折り合いを見つけていくといいと思います。

 

対処法

①触られても大丈夫なものを選別させておく。自分の許容できる範囲のものだけ学校に持ってきたらいいので。ないかもしれませんけど。

 

②周りの友達へ周知する。あまりよいことではないかもしれませんが、Aさんの意向も聞きながら、知っていてもらうことも大事かもしれません。

 

 

ただし、Aさんは自分のものを触られたとしても、怒ったり、つかみかかったりすることなく、言葉で伝えていくことを約束をさせておきます。そういった地道に、自分の言葉で伝える練習もしながら、友だちとの関わりを増やしていって、Aさんへの理解を深めていってもらうことです。

 

③触られたものをタオルで拭いてもよいことにする。これは、教師とAさんだけの秘密の約束にしておきます。触られて、すぐに堂々とタオルを持ち出して拭きだすと、かなり失礼な行為になってしまいます。そういった周りの子への配慮も教えながら、触られたものはタオルで拭いてもよいことにします。

 

 

①、②、③あたりでAさんが納得できたなら、Bさんに怒って、つかみかかろうとしたことを教師と一緒に謝り行きます。必ず大人が橋渡しをすることが重要なので、一人で謝りに行かせないように。ここまでできたら、ひとまず解決とみていいでしょう。

 

 

ASD特性の子どもは、約束やルールを自分なりに納得できると、こちらが思う以上に律義に守り抜く意思の強さもあります。それが良いところだという風にほめてあげるといいでしょう。ASD特性のお子さんが学級等にいる場合は、こういったトラブルはよく起こると思いますが、そんな学級こそ、丁寧に対応してあげましょう。

 

 

話の聞き取りなどは、非常に実に手間と根気がいる作業になりますが、一方的にこちらの言い分を押し付けてしまうだけの対応にならないよう気をつけたいものですね。

 

 

発達障がいの子と関わる上で一番大切なこと

 

最後に大切なお話をします。それは、診断名だけで子どもを判断することは間違っているということです。診断名だけで子どもにレッテルを貼って関わることは、本来の子どもの姿を見誤ってしまいます。

「この子はASDだから、〇〇に違いない」

「この子はADHDだから、お薬を処方してもらった方がいい」

などと診断名だけで安易に判断してはいけないということです。診断名がつくことで、親ならホッと気持ちが楽になる部分があるのも事実です。親の育て方の問題ではなく、発達障がいによるとらえ方に違いであることがわかり、自分を責めずにいられるので、辛い思いをしていた方には必要なことでしょう。

 

しかし、私たち教育現場の人間は、あまり診断名だけに固執して子どもを見るのは、本当の子どもの姿を向き合うことから、離れていってしまいます。

子どもは10人いて10人とも違います。同じ診断名が出ていたとしても、です。1人として同じ色の子はいないのです。

実際に日々、子どもを間近で見ている私たち教員からすると、お医者さんが付ける診断なんて実はあまり役に立ちません。「この子の診断名は本当にそう?」ということもしばしばあり、現場の私たちが混乱してしまうこともあります。ASD特性の子が、ADHDと診断されていることなんて、本当によくありますから。まぁそれは当然と言えばそうかもしれません。

 

お医者さんが子どもと会って話をしたり、保護者から聞き取ったりする時間なんてほんのわずかです。子どもが1日の大半を過ごす学校での様子をじっくり観察しているわけではないので、正確にわからないのはむしろ当たり前のことです。(お医者さんの中には、正確な子どもの情報をつかむために学校まで観察しに来てくれるような熱心な方もいらっしゃいます。我々教員にとって、それほどありがたいことはないです)

 

なにより、大事なことは、実際に、子どもをよく観察し、子どもと関わっていく中で、適切な支援方法を見つけていくことです。それを身近に日々行っているのは、我々教員しかいないわけです。子どもの実態を正確につかむ上で、私たちの目利きが何より重要です。ASDの子どもに限らず、対応が難しいなぁと感じる子どもと関わる機会があるのなら、まずはしっかり子どもを観察してください。そこから、どんな支援方法が有効であるかというヒントが転がっているはずですから。

 

 

それでは、今回はここまでにします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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