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【正しい受け答えを知っておこう】支援学級のことを子どもにどう説明する?

2019年11月11日

 

こんにちは、今回は【正しい受け答えを知っておこう】支援学級のことを子どもにどう説明する?というテーマでお話していきます。

 

 

こんな方におすすめ

  • これから教員をやっていこうと思っている方
  • 教員の経験が浅い若手の先生方
  • 支援学級児童に興味がある保護者の方

 

今回は、私たち教員が子どもや保護者に支援学級を説明するケース大人(保護者)が子どもに支援学級のことを説明するケースの2パターンを考えていきます。その時々の受け答えを知っているか、知らないかで相手の受け取り方は大きく変わります。是非とも正しい受け答えを身につけていただけたらと思います。最後までご覧になってください。

 

そういう私もけっこうありました。でも、この受け答えは、とても重要で、適切な言葉遣いをすることで、子ども・保護者の印象も違ってきます。一度、ここでどんな受け答えをしたらよいか考えてみましょう。

 

 

 

学級担任が支援学級を勧めてもよい?

 

では、まず学級担任が保護者の相談に乗っている場面を想定して、どのように受け答えをしたらよいか考えてみましょう。問題形式にしていますので、自分ならどうするか考えながら読んでいってください。

 

子どもの学習面を心配する保護者の相談

 

あなたには、新しく受け持ったクラスがあり、そのクラスにはAさんという男の子がいます。Aさんは、生活面、そして学習面ともに、課題が多く、授業の内容もほとんど理解することが難しい状態でした。担任として、日頃から声をかけ、学習のフォローはしているが、全体の中で見ていくのは難しいと悩んでいました。また、Aさん自身もクラスの中での授業を受けるのがしんどくなってきているようです。

そんな矢先の個人懇談で、保護者からこう相談されました。

「先生、私の息子は授業にしっかり参加できていますか。家では、宿題にいつも時間がかかって、心配なんです。」

さぁ、あなたならどう返事をしますか。自分なりに答えを考えてから、次に進んでくださいね。

 

 

 

まず、おおよその答えを言う前に絶対に言ってはいけないNG回答を紹介します。

 

回答① 

「でも一生懸命頑張っているので、大丈夫ですよ。私がしっかりフォローしますよ。」

 

回答② 

「まったく授業にはついていけていません。これからも正直難しいですね。」

 

回答③ 

「全体の中で授業に参加するのは難しいので、個別指導ができる支援学級をおすすめいたします。そこで手厚くみてもらいましょう。」

 

なぜ、これらの受け答えはNGなのでしょうか。読み進める前に考えてみましょう。

 

 

 

まず、回答①は、大丈夫と根拠のない受け答えをしているところです。Aさんなりに一生懸命しているのだけれども、それでもできない状態になってきているので、安易に大丈夫とは言ってはいけないでしょう。大丈夫と言ってしまうと、保護者が安心してしまい、本当の問題解決につながりません。保護者の話を受け止めることは当然ですが、担任一人でできるフォローにも限界があります。担任としてやることはしてきているが、それでも、しんどい状況が改善しないことに目を向けるべきでしょう。

 

回答②は、こちらはちょっと正直すぎますね。ズバッと言いすぎてしまうと保護者も傷ついてしまいます。さらに追い打ちのごとく「これからも正直難しい」とまで言われると、感情的に相談したくなくなってしまいます。信頼関係にひびが入ってしまいかねない発言なので、ストレートすぎる表現は気をつけましょう。

 

 

回答③は、一見、何も問題ないようですがこれも間違いです。NGワードは支援学級です。担任がいきなり支援学級へどうぞ!なんて言ってはいけないものです。最終的に支援学級へつながるケースは数多くありますが、担任の判断だけで支援を勧めるようなことがあってはいけないのです。

 

では、どんな風に答えたらよいか。必ずこうでなければならないというわけではないですので、参考程度に読み進めてください。まず、基本姿勢は保護者の思いに寄り添っていることがわかるように、真剣に耳を傾けることです。途中で話に割って入ったりすることなく、最後までうなずきながら目を見て話を聞きます。その上で、「私もAさんが困っているのではないかと心配していました。Aさんがよりよく学校生活を送ることができるように、一緒にできる支援を考えていきましょう。」

 

ここからさらに、じっくりAさんの困っているところを保護者から聞き出します。担任も学校でAさんが実際に困っている場面を思い出しながら伝えていきます。そして、困っている子どもをサポートしていくこと(学級担任の頭の中には通級指導教室、支援学級が浮かぶはず)ができることを伝え、後日詳しく話し合いの場を持つことを約束しておきます。

 

ここからは、担任だけでなく、学年での共有、そして、学校内の支援会議などへ話を持っていくようにします。そこから、専門家などの助言をもとに、結果として、支援学級の入級を検討してもらうことにするのです。けっこう、めんどくさくて、手間のかかることですが、先の長い支援をしていくためには、学校全体で子どもの情報を共有し合うことが必要なのです。間違っても、担任がいきなり支援学級をお勧めすることがないように・・・

 

 

子どもから支援学級について質問が出た時

 

子どもの素朴な疑問にどう答える?

 

次は、学級担任が子どもをおしゃべりをしていて、子どもから質問をされた時に返す言葉を考える問題です。

 

あなたは、受け持ったクラスがあり、そのクラスにはBさんという女の子がいます。そのBさんがさきほど出てきたAさん(支援学級に入級したと仮定)のことを質問してきました。

「先生Aさんは、なぜ支援学級に行っているの?」

さぁあなたならどう返事をしますか。こんなストレートな質問を子どもたちはしてきます。

 

 

教師として、迷うことなくびしっと答えておきたいところです。では、じっくり考えてみましょう。

模範解答を言う前に、言ってはいけないNG回答を紹介します。

 

 

 

回答①

「Aさんは、支援学級に行って、みんなに追いつくために頑張っているよ。」

 

回答②

「Aさんは、勉強が苦手だから、できるようになるために、支援学級に行っているんだよ。」

 

回答③

「Aさんは、勉強をもっとできるようになるためだよ。応援してあげてね。」

 

 

では順になぜNGなのか説明していきます。

 

まず回答①は、「追いつくため」という言葉を使っていることです。支援学級の学習はみんなに追いつくためにしているのではありません。(保護者はそういう希望を持って入級させているケースは多いですが)ついつい日本独自の考え方である「みんなと同じ」というのが良しとされているところがありますが、支援教育の理念は、みんなに追いつくことを目指しているわけではありません。

その子自身の力を伸ばすために支援しているのですから、みんなよりできる、みんなよりできないというように、人と比べてしまうような答え方はしない方がよいです。

 

 

回答②は、別に問題ないのでは?という意見もありそうですが、ポイントは「勉強が苦手だから」というところです。この発言だけでは、支援学級のイメージが悪くなってしまいます。支援学級は「勉強ができない子の行くところ」という印象を子どもたちに与えてしまいます。

もちろん、本来そういう部分はないとは言えないですが、そこをオープンに言ってしまうのは、周りの子どもたちによい影響を与えません。「あの子は自分より下だ。」「私はあの子より偉いんだ。」などと、人を見下したり、上下関係を作ってしまったりする危険性があります。勉強ができる、できないが人の価値になるはずがないので、そんなことを考えさせてしまうようなことを言う必要がそもそもないわけです。

子どもに伝えるなら、前向きな部分も伝えなければいけないでしょう。

 

 

回答③も、微妙ですが、あえてNGにしました。NGワードは、「応援してあげてね。」というところです。回答②の考え方とも似ていますが、応援してあげてと言うのは、なんか上から目線の印象を与えてしまいませんか。頑張っているから応援してあげて。子どもの中で上下関係を作ってしまう印象をも与えかねません。

頑張っているのは、学校に来ている全ての子どもに当てはまり、通常の学級や支援学級で、それぞれ子どもたちは頑張っているので、一方から一方へ「応援してあげて」なんていらないです。「頑張っていること知っててね。」くらいでいいと思います。別に支援学級に行くことが特別なことではなくて、自然と送り出してあげる雰囲気が一番望ましいのではないでしょうか。

 

では、どう答えるのがよいか考えていきます。

 

「Aさんは、自分がわかりやすい方法で学習していくために、お家の人と話し合って支援学級で学んでいくことを決めたんですよ。支援学級では、静かなところで学習できたり、少ない人数で学習できたりして、自分の学習しやすい環境で学べます。そこでは、苦手なことだけでなく、得意なことも伸ばす学習ができるんです。人それぞれ自分に合った学習方法を選んで学んでいるんだよ。」

こんな感じでしょうか。この言い方なら、Aさんに対してマイナスなイメージを与えることもないはずです。

きっと、Bさんも「ふーん、そんなところがあるんだなぁ」と興味を持ってもくれるはずです。そんな声が子どもから出てきたタイミングで支援学級の出前授業なんかができたら、クラスのみんなの支援学級への理解もより深まることでしょう。

 

 

保護者が気をつけたい言葉かけ

 

それでは、保護者は自分の子どもに支援学級のことを聞かれた時に、どのように答えるのがよいのでしょうか。基本的には、先ほどの例で学級担任が子どもに伝えていたような言葉かけができたらよいでしょう。

しかし、支援学級のことを伝える際に、気をつけておいてほしいことが2つあります。

1つ目は、支援学級の子どものことを説明をする際は、「障害」という言葉を遣うことは避けた方がよいということです。障害という言葉を遣って、違いのある子どものことを説明しようと思うかもしれませんが、私はすぐにはこの言葉は教えない方がよいと思っています。

「それでは、支援学級は障害を持つ子どもがいるのだから、その言葉を遣わずにどうやって説明をするの?」という声も聞こえてきそうですが、支援学級在籍児童に必ず障害があるとは言えません。病院等で診断を受けていない場合も障害とは言えないので、それらをひとくくりにしてしまうのはよくないでしょう。また、子どもが、その言葉を覚えると、何かにつけて障害という言葉を多用してしてしまうことにもなります。お家の方との会話内のことであれば問題ないですが、当事者の前で言ってしまったり、障害をからかいの対象にしていしまったりする可能性があります。

もし、障害という言葉を教えるのであれば、子どもの発達段階を考慮し、しっかりと子どもに障害のある人を理解させていく教育のプロセスが必要です。正しく教えていくために、まず大人が学んでいく姿勢を持っておくことが何より大切になります。少しずつ子どもの思いを聴きながら、受容的な気持ちを育てていくのです。そのような気持ちが育てば、「この子は障害がある子。」「支援学級は障害がある子が行くところ。」などという言葉は子どもから決して出てこないはずです。

 

 

気をつけてほしいこと2つ目は、安易に支援学級に入れるなどと子どもに言わないようにしてほしいことです。子どもが宿題をしない、決められたルールを守らないなどがあると、「支援学級で入って見てもらうよ。」などと言ってしまうことです。親としては子どものことを思って、ちょっとでもやる気を出させるために、はっぱをかけるつもりで言うことかもしれませんが、これを聞いた子どもはどう思うでしょう?

「支援学級は行ってはいけないところなんだ。」「支援学級に行くとダメになるんだ。」などと誤解を招いてしまうことになります。決して行ってはいけないところでも、ダメになることもありませんので、言葉一つで子どもにマイナスイメージを植え付けることになってしまいかねません。十分この点には配慮いただきたいと思います。

 

 

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【障害理解教育】の考え方と進め方を紹介します。子どもがみるみる変わる。

 

 

大人は子どもの手本となるような言葉を選ぼう

 

支援を必要とする子、障害を持つ子、支援学級のことなどは触れにくい話であり、ついつい話を避けてしまいがちです。なぜ、触れにくいのかというと、それはその対象となる相手のことをよくわかっていないからです。さらに、知らないことを知ろうとせずに、口を閉ざしてしまうところも大人にはあるものです。「あの人はなんであんなことをしているの?」と子どもに聞かれて、「しーー、あまり見てはいけないのよ。」とごまかしてやり過ごしてしまった経験が一度はあるのではないでしょうか。しかし、これではお互いに正しく理解し合うことにはならずに、子どもの知りたいという興味と学びのチャンスを奪っていることになっています。まずは、私たちが正しく理解をし、それを正しく伝えていくことが大切なことではないでしょうか。

 

先生・親の何気ない一言でも、子どもに大きな影響を与えることがあります。決して、思いつきや一時の感情だけで話をすることがないようにしたいものです。大人は、言葉で子どもを育てていくんだというくらいの気持ちで、子どもと話をしていかなければならないでしょう。さらに障害理解を深め、子どもがどんな人に対しても、思いやりを持って、前向きに関われるような言葉がけができたらいいですね。

今回の記事を読んで、みなさんが、さらに色んな子どもとの関わり合うことの機会になってくれていたら幸いです。

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今回はここまでにします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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